「リスク情報収集AI技術」解体新書 #4(3)
~KYCコンサルティングのコア・コンピタンス(競争優位の源泉)~
#4 リスク情報収集AI技術を解き明かす
(3)KYCコンサルティングのAI技術
前回のコラムでは、具体的な事例を挙げながら改めて実務上の課題について解説しました。今回は、KYCコンサルティングが従来の手法からどのような革新を起こし、業務上の課題解決を図っているか、その方法を紹介します。
AIによる読解技術で不要なノイズ一切なし 作業の効率化に直結
企業側は、定められた法令に応じるため、新たな実務や、それに伴った課題が生まれました。課題については前回で解説した通り、情報の信頼性欠如やチェック基準の曖昧さ、膨大な工数と費用などです。KYCコンサルティングが、どのような方法でこれらの課題解決を図っているか、解説します。
当社が提供するリスク情報は、新聞社、中央省庁や地方自治体が公表している信頼性の高い情報です。国内1,000カ所以上、海外240カ国以上(2024年3月現在)から公知情報を取得し、24時間365日収集し続けています。さらに、オンライン上では閲覧不可能な訴訟情報も取得しています。これらの情報は、ウェブ上で一時間おきにアップデートされ、速報性が担保されています。
作業工数や時間に関しては、AI(人工知能)を活用して機械的な処理を施すことで、高速で大量の作業に対応できるようになりました。調査担当者が自ら情報を収集し、記事を確認する作業自体が割愛され、大幅な作業の効率化に貢献します。具体的には、従来1,000件の調査処理に、約40時間を要していた作業が1分で全工程を完了します。
AI技術の活用法について、従来の情報収集方法を例に解説します。従来の情報収集は、複数のキーワードを組み合わせて検索することで、できるだけインターネットや新聞記事のデータベースから漏れなく情報を吸い上げる方法でした。キーワードを数十個作ることも珍しくありません。ですが、その方法では、調査内容に関係のない(記者やカメラマン、被害者の氏名などの)不要情報まで拾い上げるのです。
当社は、不要な情報を排除するため、AI技術を活用して機械的に読解し要約を行う処理を施しています。それにより、記事内容がポジティブまたはネガティブな情報であるかの判別や加害者情報(氏名・生年)、罪名(犯罪・違反行為の内容)と日本の法律名などまで機械的に処理を加えた形状でデータベースに取り込んでいます。
前編の解説事例に用いた「師匠の技を盗む」と「師匠の財布を盗む」の文脈の違いも、文章からAIによる読解処理によって可能にしました。「技を盗む」は、リスクチェックの調査に不要な情報として排除され、「財布を盗む」は、窃盗行為であるため、ネガティブ情報に判別されます。
調査結果は、新聞・ニュースメディア記事内容を5W1H(いつ・どこで・だれが・何をした)形式に要約されたレポートが自動的に作成します。記事本文を一読しなくても、どのような犯罪歴があるか一目で分かるため、余計な操作や確認の必要がありません。従来の調査との大きな違いは、検索して抽出された結果に、100パーセントネガティブ情報しか表示されないということです。コンプライアンスチェックに必要な情報のみが表示され、ノイズを一切含まないことが作業の効率化に直結するのです。
時代に応じた情報を補完 コンプライアンスチェックに特化したデータベースとサービスを提供
調査に必要なカテゴリーを網羅した情報量の多さも、当社サービスの大きな特徴の一つです。従来のインターネット検索や新聞記事のデータベースと比較すると、検索できる記事に限りがあります。時間の経過により閲覧不能になるものや、新聞記事のデータベースにおいては、ニュース性に乏しいものは新聞記事にはならないことも多くあります。
例えば、殺人事件での逮捕や中小企業における違法行為があっても、ニュース性が乏しく新聞記事として扱われない事件は検索しても調査対象としても上がりません。行政処分などの情報に関しては、公開されるファイル形式の違いによって検索してもヒットせず結果として表示されないことがあります。
当社は、コンプライアンスチェック専用のデータベースとサービスを作り、提供しています。そのため、コンプライアンスチェックに特化したリスク情報として、行政処分に関しても、各中央省庁と地方自治体が 公開している指名停止措置などの行政処分情報を直接取得しています。
マネーロンダリング対策に関する必須情報として、制裁リストと要人情報も網羅しています。これらのリストは、ウクライナとロシア間の紛争に伴って頻繁に更新され、その情報は国際的に共有されています。各金融機関は、毎日、追加情報をチェックし、制裁リストの対象が自社取引先に存在するかどうか確認が必要です。要人情報は、国際的な要人に該当する人物は賄賂のやり取り対象になりやすいことから、国からの要請で注意対象に指定され、要人に該当するか否かのチェックが求められます。
制裁リストや要人情報は、新聞・ニュース記事には無関係であるため検索しても情報が取得できません。これらの情報は、従来までの反社チェックに必要な項目ではなかったため、現在のコンプライアンスチェックの視点から見ると調査に必要な情報が不足しているのです。コンプライアンスチェック専用に作られたサービスでないものを調査に利用すれば、必要な情報が不足するのは当然で仕方のないことです。
当社は、現在のコンプライアンスチェックに必要な情報を補完し、AI技術を活用したデータベースによって業務の効率化図ることで、これからも企業の課題を解決し、貢献し続けます。