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AML(マネー・ローンダリング防止対策)の重要性とは?

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 企業が事業経営を持続および発展させていくためには、資金が必要不可欠となります。資金を得るために正当な事業運営をしている企業がほとんどではありますが、中には不正な手口を使って資金を得ようと考える企業があることも否定できません。そのため、企業においてはAML(マネー・ローンダリング防止対策)を講じることが極めて重要であると言えるのです。

 本記事では、企業におけるAML(マネー・ローンダリング防止対策)の重要性について解説します。

マネー・ローンダリングについて

 マネー・ローンダリングとは「マネロン」と省略されて表現されることもあり、英語表記でmoney launderingと表し、日本語では資金洗浄を指しています。マネー・ローンダリングは、正規の事業活動で得られた資金ではなく、犯罪などの不正な手口で得られた資金の出所を不透明にさせることを目的としています。

 マネー・ローンダリングを行う目的は、正しい資金の出所および実際の資金所有者を不透明にさせることで、警察当局などの機関が行う捜査によって検挙されることを逃れることが最大の目的なのです。

企業におけるAML(マネー・ローンダリング防止対策)について

 AML(マネー・ローンダリング防止対策)とは、Anti-Money Launderingの頭文字から称されています。

 マネー・ローンダリングを含め、テロなどの凶悪的な犯罪を行うための資金供与を防止することを目的としています。巨額の違法資金がテロ行為を行う犯罪組織などに流れることで、さらなる凶悪犯罪を発生させてしまうリスクもありますので、犯罪を未然に防止することを目的として銀行・証券会社などの金融機関では日本政府が発出している規制によりAML(マネー・ローンダリング防止対策)強化が強く求められているのです。

日本におけるAML(マネー・ローンダリング防止対策)の現状について

 日本国内においても、さまざまな企業でAML(マネー・ローンダリング防止対策)が講じられています。しかし、世界的な視点で現状を確認すると日本におけるAML(マネー・ローンダリング防止対策)は不十分であると指摘されています。マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策を行うことを目的として発足されている国際組織であるFATF(金融活動作業部会)が公表したレポートによると、日本国内の一部金融機関が実施しているAML(マネー・ローンダリング防止対策)には不備があり、さらなる対策強化が喫緊の課題であるとされています。

 金融庁では、2024年3月末を目途としてAML(マネー・ローンダリング防止対策)に関する対応策を講じるように指示していますが、中には現段階において具体的な計画が策定されていない金融機関も存在します。

 これからは、より適切なKYCチェックを実施することで上述したインフラ整備の促進が緊急の課題となっているのです。

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マネー・ローンダリングの事例について

 日本国内においても、さまざまなマネー・ローンダリングの発生事例があります。ここからは、代表的な具体事例をご紹介します。

1.企業間における架空取引に伴う隠ぺい

 とある企業の役員が、企業間における架空取引などにより不正に搾取した約束手形を現金化し、犯罪収益の一部である約4,000万円を役員の親族が契約している銀行の貸金庫に保管しました。

2.不正入手した融資金の隠ぺい

 とある企業の役員が、自社の財政状況が良好であると偽り、金融機関から融資を受けた8,000万円のうち500万円を、事情を把握していない者に譲渡して他人名義の証券口座に振り込ませました。

 なお、証券口座に振り込まれた資金は企業の役員が私的に株投資に使用していました。

3.違法営業者からの金銭受領(その1)

 とある企業の役員が、違法である風俗営業を展開している人物に建物を提供しました。なお、違法な収益である事実を知っていながらも家賃名目で金銭を受領していたのです。また、不正に受領した金銭は家族名義の積立式生命保険の支払に使用されていました。

4.違法営業者からの金銭受領(その2)

 とある企業の役員が、違法な風俗営業の収益である事実を知っていながらもコンサルティング報酬の名目で企業口座に金銭を振り込ませていました。

5.盗品などの譲受に伴う検挙

 とある企業の役員が、外国籍の人物より盗品である事実を知っていながら化粧品などを不正に買取り、盗品等有償譲受けおよび組織的犯罪処罰法違反に該当するとして検挙されました。現在においても事件の詳細は不明とされていますが、マネー・ローンダリングの規制範囲内との判断に至ったケースであると言えます。

6.違法店舗の売上金を使用した株式会社設立

 とある企業の役員が、正式な許可を取得していない、接待を伴う飲食店であり風営法の営業許可を必要とする店である社交飲食店を営業して得た違法な収益を、株式会社の設立に必要として発行された株式の出資金に充当し、発起人としての地位を獲得したうえで自身を代表取締役に選任しました。

7.特殊詐欺で得た違法な収益を別口座に隠ぺい

 とある企業の役員たちが、地方公共団体の職員になりすまして搾取した他人名義のキャッシュカードを悪用し、自分たちが管理する他人名義の口座に振替入金しました。電子計算機使用詐欺に該当する特殊詐欺によって得た違法な収益を管理していたことに起因して、組織犯罪処罰法違反で検挙されました。

8.国際的な詐欺

 とある企業の役員が、アラブ首長国連邦の被害者より日本国内に存在する銀行の法人口座に送金された詐欺被害金を、正当な事業収益として偽り払戻しを受けたことに起因して、組織的犯罪処罰法違反および詐欺罪で検挙されました。

マネー・ローンダリング防止に関連する法律について

 日本では、FATFに参加することを表明しており、マネー・ローンダリングが発生するリスクを内包している経済活動に対して、警察当局が行う調査を毎年実施しています。また、FATFから日本に対するマネー・ローンダリング対策の評価を考慮して、犯罪収益移転防止法により、特定の事業者に対してマネー・ローンダリング防止措置を義務付けています。

 犯罪収益移転防止法とは、マネー・ローンダリングそのものを直接的に取り締まることを目的としているのではありません。あくまで、金融機関といった特定の事業者に対してユーザー確認および不正と思われる取引の届出を義務付けているのです。本法律では、特定の事業者に対して行政機関からの指導および命令に従わない場合、処罰規定も制定されています。努力義務ではなく、実施の義務ですので非常に厳正かつ実行力の大きな法律であると言えるでしょう。

企業におけるAML(マネー・ローンダリング防止対策)で求められる対応について

 2021年に金融庁が公表したマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインでは、AML(マネー・ローンダリング防止対策)の強化について具体的な記載があり、企業に対応を求めています。
なお、具体的な強化対策については次のとおりです。

  1. リスクベースアプローチ
  2. 経営陣の関与および理解
  3. 官民連携および関係当局との連携

上述した内容を遵守することで、有効性を高めつつマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策を構築することが可能となっています。

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まとめ

 ここまで、企業におけるAML(マネー・ローンダリング防止対策)の重要性について解説しました。マネー・ローンダリングを行うことで資金の出所などが不透明になってしまうことから、テロなどを行う犯罪組織に資金が流れてしまう可能性があります。そのため、日本国内にある企業は、適切なAML(マネー・ローンダリング防止対策)を講じることが日本国内だけに留まらず、世界的にも強く求められているのです。
 本記事が、AML(マネー・ローンダリング防止対策)を行っている企業にとって一助となれば幸いです。