• コラム

重要視され始めたリファレンスチェックとは?リファレンスチェックの流れとともに解説

  • KYCコラム
  • リファレンスチェック
  • 経営

現在の日本では、昔のように終身雇用が当たり前のように行われている時代ではなく、転職する機会は増加傾向にあります。また、本業だけに留まらず副業およびフリーランスといった多様性ある働き方が注目されています。そのような背景があり、企業にとって人材を採用するにあたって必要な情報が不足しがちであるため、リファレンスチェックの重要性が指摘されています。

海外などに拠点を置く外資系企業では珍しいものではありませんが、日本国内に拠点を置く日系企業ではリファレンスチェックの浸透がそれほど深いものではない現状があります。本記事では、企業におけるリファレンスチェックの重要性について解説します。

リファレンスチェックとは

リファレンスチェックとは、企業に採用しようとしている人物に対して、履歴書や面接だけでは判明しない内容を元職場の上司および同僚などから情報を取得する講師を指しています。

採用候補者が他社において、在籍期間中においてどのような実績や功績を積み重ねてきたのかを判断するとともに人物像などについても情報を採用前に取得することで、企業が採用可否を判断する際の材料を増加させることが主たる目的となっています。リファレンスに伴う回答者は、採用候補者の現職および前職のときに接点を持っていた上司・部下・同僚などが該当します。

リファレンスは企業の採用担当者が独自判断で実行できるものではなく、採用候補者の承諾があって初めて成立します。具体的には、企業や外部委託業者によって、電話・メール・専用ツールなどをさまざまな媒体を用いてヒアリングを実施します。リファレンスを行うタイミングは企業によって差異がありますが、採用を決定する内定前後において実施されるケースが多くなっています。なお、情報の確度を高めることを目的として、一般的には2人以上の人物より回答を得るようにしています。

リファレンスチェックのメリットについて

リファレンスチェックを行うことで、履歴書や面接だけでは計ることができない情報を入手できますので企業にとってのメリットは非常に大きなものとなっています。

ここからは、具体的なメリットについて詳しく解説します。

ガバナンス強化

現代において、企業に求められるコンプライアンス遵守は非常に大きなものとなっています。

コンプライアンスを遵守することで、不正および不祥事などを未然に防ぐことができますので、結果的に企業価値の向上や信頼の失墜の防止が期待できます。コンプライアンスを遵守するためには、まずはコーポレートガバナンスを適切に構築することが極めて重要であると言えるのです。

企業が人材採用をするにあたって、採用候補者が過去においてコンプライアンス違反をした経過がないかどうか確認することは、企業にとって極めて重要な要素であると言えるでしょう。採用面接時において、履歴書や面接の質疑応答だけでは、採用候補者が虚偽の申告をする可能性を否定できません。そのため、採用候補者の申告内容に虚偽がないかどうかを確認するための手法として、リファレンスチェックが極めて有効であると言えるのです。

※反社会的勢力(反社)への対策について詳しく解説しております。

選考効率化

企業において、人材を採用する行為は慎重を期さなければならないため時間と労力が必要となります。リファレンスチェックを行うことで、採用候補者のより深い情報を入手することが可能となるため、採用するに至るまでの初期段階である程度のスクリーニングをかけることができます。

そのため、選考効率化が期待できるのです。

労使におけるミスマッチ防止

リファレンスチェックを行うことで、履歴書や面接時の質疑応答で得られる内容以上の情報が手に入ります。前職および現職の上司・部下・同僚などからの情報によって、自社に適合しているかどうかをより深く判定することができるのです。

その結果、企業と採用候補者との間で発生しがちなミスマッチを軽減することができます。

採用後の支援

リファレンスチェックは、選考時だけにメリットが働くわけではありません。採用選考時において多種多様な情報を入手できることから、さまざまな長所や短所を把握することができます。

また、人物像や価値観を確認することができますので、採用後における人材マネジメントに役立てることができるのです。

リファレンスチェックの流れについて

リファレンスチェックは、求職者がリファレンス先を紹介するケースと企業がリファレンス先を探すケースがあります。

ここからは、リファレンスチェックの流れを詳しく解説します。

リファレンスチェックの説明

リファレンスチェックは、企業サイドより求職者に対して実施の意向と目的が説明されます。求職者は、リファレンス先として紹介したい企業や人物の承諾を得て、連絡先の共有が依頼されます。求職者は、リファレンスチェックの承諾後において応募先企業に対してリファレンス先として紹介する企業や人物に連絡を取ります。

また、企業は独自にリファレンス先を探すケースもあります。

連絡先の展開

リファレンス先より同意を得たうえで、連絡先が展開されます。

項目決定

企業はリファレンスチェックを活用して質問する項目を検討して決定します。なお、質問項目についてはリファレンスチェック実施前において、リファレンス先に共有される場合も想定されます。

質問の実施

リファレンスチェックを実施します。

情報共有

企業はリファレンスチェックの内容を適切に整理して、選考に携わる担当者と共有します。

リファレンスチェックの注意点について

リファレンスチェックを行うことで、企業はさまざまなメリットを享受することができます。そのため、近年ではリファレンスチェックを行う企業が増加傾向にありますが、現在施行されている日本の法律を鑑みると、リファレンスチェックそのものを禁止する法律は存在しません。

しかし、企業はリファレンスチェックを行うことで採用候補者のさまざまな情報を入手することとなりますので、リファレンス回答者より得られた情報は、個人情報保護法 2条2項に該当する個人を識別する情報である可能性が極めて高くなっています。そのため、リファレンスチェックそのものは法に抵触していないとしても、取り扱う情報は個人情報保護法が適用される可能性を視野に入れなければなりません。

リファレンス回答者より得られた情報が個人情報保護法適用範囲であるのであれば、個人情報保護法 21条に則り、原則として予め利用目的を公表するもしくは情報取得後において速やかに本人に公表する必要があります。

これらを理由として、採用候補者に内密でリファレンスチェックを実施してしまうと、法律違反に問われてしまう可能性がありますので注意が必要です。

まとめ

ここまで、企業におけるリファレンスチェックの重要性について解説しました。リファレンスチェックとは、企業にとってのメリットが非常に大きいため是非とも導入すべき事象となっています。

しかし、リファレンスチェックによって取り扱われる情報が極めて個人のプライバシーに抵触するような内容が含まれているため、個人情報保護法の適用については最新の注意を払わなければならないことを念頭に置くべきであると言えるでしょう。

本記事が、リファレンスチェックを導入する企業にとって一助となれば幸いです。