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【レグテックソリューションの今#2】KYCコンサルティングのコア・コンピタンス「Solomon」とは?(後編)

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前編はこちら

犯罪や不祥事のみの情報を、瞬時に検出

AIによる自動化で最新情報も1時間おきに収集

 前編を踏まえて、KYCにおける最先端のソリューションとして、当社が提供する、AI(人工知能)によるチェックツール「RiskAnalyze (リスクアナライズ) 」と、リスク情報提供データベース「Solomon (ソロモン) 」とは何かを事例とともに解説します。

3.「RiskAnalyze」とは

・RiskAnalyze

 RiskAnalyzeとは、ウェブサービス型の反社・コンプライアンスチェックツールです。

 利用者は、対象者の「氏名」だけを入力して、その調査結果をウェブ上に表示し、ダウンロードできるサービスです。1件あたり0.2〜0.3秒で表示します。専門的なノウハウがなくても、簡単な操作でコンプライアンスチェックができます。

 一番の特徴は、全ての異体字に対応していることです。例えば、「齋藤、斉藤、斎藤」など、ニュース記事には戸籍上の字体を記載されるとは限らないため、作業ミスが起きないように異体字に対応して照会処理を行っています。

 その仕組みは、「Solomon」を利用しています。

コンプライアンスチェックの工程例

 新聞記事のデータベースや、インターネット検索によるコンプライアンスチェックの作業は、五つの工程があります。「ネガティブワード設定 → 検索 → 検索結果から取捨選択 → 文章読解 → リスク分類」です。これらの工程1,000件のチェックにかかる時間は、人が行う場合40時間と想定されます。RPA (ロボティック・プロセス・オートメーション) ツールの場合、文章読解、リスク分類は、人が行うため10時間かかります。 RiskAnalyzeは全ての工程を一括して1分で処理しています。

検索結果を一覧化

 担当者が変わった、退職したことで引き継ぎがうまくできなかった、調査レベルの質にばらつきがあるなどの声が多くあります。企業にはそのような課題があることから、私たちは、独自に国内情報6項目と、海外情報9項目のリスク区分を設けています。暴力団、密接交際者、特殊犯罪(マネーロンダリングなどの経済犯)、過激派、準暴力団、一般で表示しています。例えば、「◯◯太郎」というキーワードを入力すると、その調査の対象者に関するネガティブ情報を、氏名、生年、住所、備考、団体名、掲載日、媒体元に分類し、一覧で調査結果を表示しダウンロードできるようにしています。

4.リスク情報提供データベース「Solomon」と活用事例

・Solomon

 Solomonでは、国内700ネットニュース、地方自治体、中央省庁の公表情報、海外240カ国の情報などを網羅し、1時間おきに自動収集しています。データの充実度は、情報の正確性そのものです。

 一般的なインターネット検索は、エンジンの特性として、ニュース情報は時間とともに、数カ月ほどで閲覧できなくなります。検索するたびに、毎回、情報が異なってしまいます。

 ニュース検索サービスでは、ニュース性に乏しい記事が掲載されていません。大きな企業が行政処分を受けた場合は、ニュースとして取り上げられますが、そうでない企業はニュースにならないのです。そうしたことに該当しない例としては、行政処分があります。ほか、訴訟情報、要人情報、制裁リスト、反社・逮捕情報を網羅しています。

ポジティブな情報は一切含まれていない、反社チェックに特化したデータベース

 データは、完全に自動で構築しています。AIが新聞記事を一つ一つ読解して、逮捕者が誰で、どういった容疑で逮捕されて、という情報をシートに記録しているほか、画面自体をスクリーンショットで残すという作業を自動で行っています。記事の内容によっては、加害者なのか被害者なのか、また、読み進めていくと、逮捕や殺人という言葉があっても、警察関係者の表彰の場合もあります。

 そのようなポジティブ記事は、この反社チェックのデータベースに格納するべきでないと、文脈によってAIが自動で判別しています。ほかにも例えば、「師匠の技を盗む」、というのは犯罪ではないが、「師匠の財布を盗む」は、犯罪行為で、法令では刑法235条の窃盗であると判別を行った上で、データベースに格納しています。

リスクチェックの業務フロー4段階、各時点での活用事例

 リスクチェックの業務フローには、四つの段階があります。それぞれの業務段階で、Solomonのデータベースと、企業のプログラムをつなぐAPI(Application Programming Interface)連携することにより、自動でリスクチェックを行うことができます。

 企業では、自社のウェブサイトに、問い合わせフォームなどから着信があった時点で、そのデータをリスト化している場合があります。その問い合わせが入った時点でAPI連携することにより、自動でリスクチェックを行います。リスクが検知されたら、自動で担当者へ通知します。そういう仕組みを社内で構築して活用できます。

 また、従来の名刺交換による商談で、契約を締結する場合は、契約書が出来上がったタイミングでチェックできる仕組みを、API連携により同様に構築できます。

 さらに、契約締結後のリスクチェックも大切です。契約締結時に問題なくても、その後、どう変化するか分からないものです。そのため、継続的にチェックすることが必要です。その作業は、取引先が増えれば増えるほど、業務量は増えていくわけです。それに対して、新着リスクが探知できたら、担当者へ連絡がいく仕組みを構築できます。

 このように、必要性に合わせて、それぞれの段階で自動的にできる仕組みを構築できることが、Solomonの一番の特徴です。

他社サービスとの連携事例

 企業が独自で構築し提供しているサービスなどと、Solomonを連携して活用している事例があります。

 名刺管理サービスのSansan株式会社 は、同社が提供する名刺管理 ツール「Sansan」に、SolomonをAPI接続してリスクチェックを実行しています。名刺管理サービスを利用して、顧客と名刺交換するという最初のタイミングで、反社チェックを実行しています。

 国内最大のオンライン型リファレンスチェックサービスを手掛ける株式会社ROXXは、リファレンスチェックサービス「back check」でAPI連携し、求職者のバックグラウンドについて反社チェック、ネガティブチェックを実行しています。

 このように、ほかにも事業者のマーケットプレイスや、マッチング系プラットフォームとのパートナーシップによりAPI連携して活用されています。

 私たちKYCコンサルティングは、独自のアルゴリズムと専門家のノウハウを学習させたAIで、自動的に国内外のリスク情報だけを収集・分析し、さらにシステムを進化させていきます。

 次回は、RiskAnalyzeの開発背景や現在の形態になるまでどう進化してきたのか、その経緯などを解説します。